ジョン・ウートン《古典的風景》1720-30年代

ジョン・ウートン (1682-1764)
《古典的風景 》
1720-30年代
油彩・キャンヴァス
81.3×107.9cm
フィッツウィリアム美術館、ケンブリッジ


John Wootton
Classical Landscape
1720-30s
Oil on canvas
81.3×107.9cm
The Fitzwilliam Museum, Cambridge

Cf., 『英国風景画展』図録、伊勢丹美術館、大分県立芸術会館、郡山市立美術館、ひろしま美術館、大丸ミュージアム・梅田、三重県立美術館、1992-93、pp.26-27 / cat.no.1

 画面にひろがる光景は、静謐さと調和にみたされたヴィジョンをしめしている。これは、堅固な構成、ついで光と大気の描出によってもたらされたものだ。
 まず、画面両端にたつ樹木が枠どりの役割をはたす。さらに、たとえば中央の小さな人物があげた腕と左端の倒れた木との平行がしめすように、事物は幾何学的な格子にしたがい、秩序だって配置されている。これが、画面に安定と緊密さの印象を与えるだろう。
 他方、そうした骨格を肉づけし、かつやわらげるのは、光と陰を交互に配することで生じる、空気の感触である。しかも明暗の交替は機械的になされるのではなく、さまざまな位置での反射や散乱、透過を擁しており、やや冷たい緑を基調に、波打つ光の起伏が全体に滲透している。
 こうして描きだされた風景は、古代風の人物を符牒に、憧憬のまなざしの対象として、古典古代というひとつの理想化された時空を呈示しているのである。

(石崎勝基)
『讀賣新聞』(三重版)、1993.4.13、「光と風の饗宴 英国風景画館展 1」

『英国風景画展』(1993/4/10~5/9)より
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