曾我蕭白《虎渓三笑図》

曾我蕭白 (1730-1781)
《虎渓三笑図》
制作年不詳
紙本墨画
132.5×56.3cm
千葉市美術館


SOGA Shohaku
The Three Laughters of Tiger Ravine
date unknown
Hanging scroll, ink on paper
132.5x56.3cm
Chiba City Museum of Art

Cf., 狩野博幸、『曽我蕭白 日本の美術 No.258』、至文堂、1988、第29図

『三重の美術風土を探るⅡ 第二部 その後の蕭白と周辺』展図録、三重県立美術館、1992、cat.no.27

狩野博幸、『曾我蕭白 新潮美術文庫12』、新潮社、1997、no.6 参考図

『江戸の鬼才 曾我蕭白展』図録、千葉市美術館、三重県立美術館、1998、p.73, p.149 / cat.no.30

『曾我蕭白 無頼という愉悦』展図録、京都国立博物館、2005、pp.110-111, 330-331 / cat.no.19


印田由貴子、「曾我蕭白筆『虎溪三笑図』の表現と主題に関する一考察」(発表要旨)、『美術史』、no.183、2017.10、p.198

 それは何がしか冷厳な、見るものの視線をはじきかえすような画面といえるかもしれない。その硬質さは、鉱物の結晶を思わせる。
 この非人間的な硬度は、画面を構成する面の性格から生じている。墨の濃淡は、明度のいくつかの段階に分かれているが、各段階はそれぞれが輪郭線によってくぎられ、しかもその内部でほぼ均一なため、ある明度から連続して移行していくのではなく、各自の明度ごとで面が不連続に分裂してしまうのである。墨の賦彩の均一さは、各面を画面にせりださせる。それでいて複数の面が桔抗しあうので、妥協の余地のない対峙のみが残ることになろう。面をくぎる輪郭線があまり曲線を用いず、直線主体であることも、柔らかく逃れることを許さない。
 縦長の画面に応じた垂直の滝を軸とすることで、各面は滝にむかって凝集しつつ、せめぎあう。それだけの勢いと方向性を残しつつ、互いが交差したとたん、動きはとれなくなってその場に凍りついてしまうだろう。これが、時間が停止したかのような、ひいては空間そのものが結晶したかのような印象をもたらすのである。

(石崎勝基・学芸員)
『産経新聞』(三重版)、1993.8.8、「美の世界 県立美術館の館蔵品から」
* 当時寄託されていました
 なお、蕭白の別の作品について、三重県立美術館のサイトより;

常設1994年度第1期(1994.3) ■第2室:曾我蕭白と三重の近世画人たち

曾我蕭白、《竹林七賢図(旧永島家襖絵)》、1765(明和元)年頃、(『中日新聞』、1990.8.3)

曾我蕭白、《夏景山水図》(『中日新聞』、1994.4.22) <所蔵品検索


曾我蕭白《寒山拾得図屏風》(表紙解説)」、『ひる・ういんど』、no.63、1998.7.25、p.9


 →こちらも参照:《唐獅子図》(左隻、1765-68年頃)の頁 
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