マーガレット・マクドナルド・マッキントッシュ(1864-1933) 《沈黙の淵》 1913年 水彩、インク・ヴェラム紙 76×63cm 個人蔵 Margaret Macdonald Mackintosh The Pool of Slence 1913 Watercolour and ink on vellum 76x63cm Private collection |
|
Cf., | 『マッキントッシュとグラスゴー・スタイル』展図録、サントリー・ミュージアム[天保山]、伊勢丹美術館、三重県立美術館、2000-01、p.105
/ cat.no.85 |
わずかな赤等の斑点を除けば、色はグレーの諧調に限定され、構成の点でも、ゆるやかな曲線を用いてはいるものの、垂直と水平の交差にほぼ還元されている。 そんな厳格さにもかかわらず、あるいはそれゆえにこそ、画面は、沈んだ静謐さの内で、物質ならざるものへと変容するかのようだ。 横たわる人物は、眠りか死か、いずれにせよ、もはやこの現実には属していないのだろう。枕もとに立つ人物は、水面に映ったものか、鏡像によって二重化され、さらに沈黙の印として、唇に指をあてている。 薄明の内で石化した世界。それを寡黙な構成が支える。ただその支える手つきには、単なる不活性さではない、鋭敏な感覚をうかがうことができよう。 |
|
(県立美術館学芸員・石崎勝基) 『中日新聞』(三重版)、2000.12.14、「美術館だより」 『マッキントッシュとグラスゴー・スタイル』展(2000/12/12~2001/2/18)より →こちらを参照 [ < 三重県立美術館のサイト ] |
HOME>美術の話>著作権切れ泰西美術等400字前後解説輯>/挿図一覧 |