クリムト《ポプラの巨木(Ⅱ)》1903

グスタフ・クリムト(1862-1918)
《ポプラの巨木(Ⅱ)》
1903年
油彩・キャンヴァス
100.0×100.0cm
レオポルド美術館、ウィーン


Gustave Courbet
Die große Pappel
1903
Öl auf Leinwand
100.0x100.0cm
Leopold Museum, Wien

Cf., 『ウィーン世紀末展 レオポルド・コレクション』図録、安田火災東郷青児美術館、三重県立美術館、1997、pp.44-45 / cat.no.4

 へんてつもない田園の眺めは、しかし、何か不安げな気分をたたえてはいないだろうか。
 たとえば、この画面でまず目を引くであろう右手の高いポプラの木は、天へ昇ろうとする炎のようなシルエットの動きをしるしている。しかも、緑や紫、赤などすばやい筆致による点は、ちらちらと明滅して、シルエットの流動性をがもたらす生命感を強調する。
 さらに、高い木とその右下の並木は、一方で極端に高さの落差がつけられながら、点描は一続きであるかのようにつながっている。この空間上の矛盾は、画面の上端まで達することで手前にせりだす巨木と、空との落差にも呼応する。空の方も、地平線がきわめて低いため、茫漠たるひろがりを感じさせずにいない。
 木の垂直と地平線の水平が交差する一見単純な構図は、このようにさまざまな矛盾をはらむことで、ある不安を感じとらせるのだ。

(県立美術館学芸員・石崎勝基)
『讀賣新聞』(三重版)、1997.4.24、「ウィーン世紀末展から 5」

『ウィーン世紀末展 レオポルド・コレクション』(1997/4/19~5/25)より
こちらを参照 [ < 三重県立美術館のサイト
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