ポール・ゴーギャン(1848-1903) 《格闘する子供たち》 1888年 油彩・キャンヴァス 93×73cm 個人蔵 Paul Gauguin Les enfants luttants 1888 Huile sur toile 93×73cm Collection particulière |
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Cf., | 『ゴーギャンとポン=タヴァン派』展図録、Bunkamura ザ・ミュージアム、京都国立近代美術館、北海道立近代美術館、三重県立美術館、郡山市立美術館、1993、pp.32-33
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画面のかなりの部分は、草におおわれた地面を表わす緑の面によってしめられている。画面下と上で緑に明度差はほとんど設けられておらず、そのため、遠近感が生じることはない。くわえてこれだけの面積だ。緑の面はキャンヴァスの表面とほぼ一致し、平面性をきわめて強調した画面が成立することになろう。 しかし平面的な画面は、決して平板ではない。緑にくわえられた暗緑や黄緑のかすかな線。左上を斜めにたち切り、さらに滝や右上の子どもが動きと方向性をもたらす。この上部と右下の帽子や服が、対角線にそって呼び交わしあっている。これらの因子が、緑の面の平面性を破ることなく、微妙な息づき、すなわち空間を生みだすのだ。 取っくみあう二人の子どもも、地面をしっかり踏みしめているとは見えまい。奥の脚二本は小さく陰になり、手前二つは異様に大きい。輪郭線でくぎられていることも手伝って、宙にひっかかっているかのようだ。子どもたちは、緑の面が呼吸できるようにと、配されたのである。そしてパンツの青と朱がそれぞれ、右下の服と画面上辺に呼応し、画面に距離感と組織性を与える。 |
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(県立美術館学芸員・石崎勝基) 『中日新聞』(三重版)、1993.9.8、「ゴーギャンと若き仲間たち 2」 『ゴーギャンとポン=タヴァン派』展(1993/9/4~10/3)より →こちらを参照 [ < 三重県立美術館のサイト ] |
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