ガルガーリョ《ウラノス》1933

パブロ・ガルガーリョ(1881-1939)
《ウラノス》
1933年
ブロンズ
79.5×110×31.5cm
デスピオ=ヴレリック美術館、モン=ド=マルサン


Pablo Gargallo
Uranus
1933
Bronze
79.5x110x31.5cm
Musée Despiau-Wlérick, Mont-de-Marsan

Cf., 『アートになった動物たち』展図録、福島県立美術館、鹿児島県霧島アートの森、山梨県立美術館、三重県立美術館、2001、pp.84-85 / cat.no.28

 この作品で目を引くのは、連鎖し交差しながら波紋をひろげていく、いくつもの弧のダイナミックな動きであろう。これらの弧は、下方のもくもくと不定形な雲から沸きあがってきて、馬の首や背、横たわる人物の脚や天球儀へと変化する。弧の波及はさらに、形態の外側の輪郭だけでなく、内側にも空洞を穿っている。
 タイトルのウラノスはギリシャ神話の天空の神で、原初の渾沌カオスから生まれた大地ガイアの、息子にして夫である。彼はガイアを苦しめたため、二神の息子クロノスによって去勢されることになる。
 この作品から、そうしたエピソードの血腥さは読みとれまい。ただ、世界が渾沌から生成するさまは、形態を混ぜあわせたまま連鎖していく弧の波及、そして馬の躍動に映しとられているといえるかもしれない。
 ガルガーリョは、ピカソやゴンサレスとともに、彫刻に鉄を導入した作家の一人として知られている。後者二人に比べると、下級な素材とされた鉄の暴力性を強調するよりは、装飾的にまとめることを得意とした。ブロンズではあるが、ここでも、ダイナミズムと融合した装飾的なデザインをうかがうことができよう。

(三重県立美術館学芸員・石崎勝基)
『讀賣新聞』(三重版)、2001.9.30、「アートになった動物たち 5」

『アートになった動物たち』展(2001/9/22~11/4)より
こちらを参照 [ < 三重県立美術館のサイト
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