エドガー・ドガ (1834-1917) 《腕を拭く裸婦》 1891頃 パステル・紙 58.0×64.0cm サンパウロ美術館 Edgar DEGAS Nude drying her Arm c.1891 Pastel om paper 58.0×64.0cm (Two strips, each 3cm in depth, top and bottom) Museu de Arte de Saõ Paulo, Assis Chateaubriand |
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Cf., | Fiorella Minervino, Tout l'œuvre peint de Degas. Les classiques de l'art, Flammarion, Paris, 1974, pp.126-127 / cat.no.905 『ドガ展』図録、伊勢丹美術館、三重県立美術館、大丸ミュージアム、岡山県立美術館、笠間日動美術館、1988-89、pp.136-137 / cat.no.72 |
目は第一に、裸婦の輪郭をたどって左手にいたるからだの伸びを感じとるだろう。太く、勢い、というよりは自身伸びをもった線はそれだけで、肉体の重さとその空間への展開をとらえる。色彩は基本的には、線が生み出す量感を助けるべく選ばれ、線の効果に拮抗するほど強くはならない。 他方線の太さは、ふくらみを示しつつも、切り抜き模様のような平面への指向をはらんでいる。それゆえ画面内の空間は狭く手前に引き寄せられ、向こう側にある右手脚はつけたしのように見えるし、臀部も滑り落ちそうである。 左手への伸びはこの狭さに対して空間をひろげようとし、その結果画面の上下に紙が継ぎ足される。しかし線が主役ゆえか、シーツの白は下端では省かれてしまっている。 線そのものがかかえている量感の暗示と平面性、空間の凝集と拡張など、相矛盾する要素のジレンマから生じる緊張によってこそ、この作品は実在感を獲得しているのだ。 |
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(県立美術館学芸員・石崎勝基) 『中日新聞』(三重総合)、1988.12.4、「ドガ展 作品紹介 7」 『ドガ展』(1988/11/26~12/25)より →こちらを参照 [ < 三重県立美術館サイト ] |
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なお、別の作品についてですが、やはり三重県立美術館のサイトよりドガについての旧稿; 『ドガ展』図録、1988.10、カタログ:彫刻 凡例、作品解説 「ドガ展」、『友の会だより』、19号、1988.11.15 「エドガー・ドガ《青い衣装の三人の踊り子》(表紙解説)」、『ひるういんど』、no.25、1989.1 ドガ、《《裸婦半身像》、1891頃(2009.6.11) →こちらも参照:ドガ《浴後、体を拭く女》(1895頃?)の頁 |
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