チャールズ・レニー・マッキントッシュ《ドローイング・ルームの椅子、フースヒル》1904

チャールズ・レニー・マッキントッシュ(1868-1928)
《ドローイング・ルームの椅子、フースヒル》
1904年
木材、暗色ステイン仕上げ、ガラスの嵌め込み
80×58×55cm
個人蔵


Charles Rennie Mackintosh
Chair for the Drawing Room, Hous'hill
1904
Wood, stained dark with glass inserts
80x58x55cm
Private collection

Cf., 『マッキントッシュとグラスゴー・スタイル』展図録、サントリー・ミュージアム[天保山]、伊勢丹美術館、三重県立美術館、2000-01、p.85 / cat.no.64

 この椅子は、背や脚の垂直、座とそれに平行する下部の水平の要素を主軸に、背および座部の下のゆるやかな湾曲が垂直と水平を橋渡しするという、きわめて簡素な構成からなる。
 簡潔さは、しかし、どっしりした安定感ではなく、宙に溶けいりそうな表情を浮かべている。これは、背の桟の垂直性と、その桟の細さによってもたらされた。さらに、桟の間の楕円形のガラスが、バランスの微妙さを伝えずにいない。
 マッキントッシュは、曲線を特徴とするアール・ヌーヴォーの中での変わり種、あるいは機能主義の先駆者と見なされてきた。近年の研究では、スコットランドの伝統との連続性が強調されているようだ。
 おそらく、いずれの要素も宿しつつ、いずれにも納まりきらない宙ぶらりの位置が、先に見たこわれものめいた相を生みだした、といえるのかもしれない。

(三重県立美術館学芸員・石崎勝基)
『中日新聞』(三重版)、2001.1.19、「マッキントッシュとグラスゴー・スタイル展 下」

『マッキントッシュとグラスゴー・スタイル』展(2000/12/12~2001/2/18)より
こちらを参照 [ < 三重県立美術館のサイト
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