ブラック《円卓》1921-22

ジョルジュ・ブラック(1882-1963)
《円卓》
1921-22年
油彩、砂・キャンヴァス
190.5×70.5cm
メトロポリタン美術館、ニューヨーク


Georges Braque
Le Guéridon
1921-22
Huile et sable sur toile
190.5x70.5cm
The Metropolitan Museum of Art, New York

Cf., 『ジョルジュ・ブラック回顧展』図録、丸亀市猪熊弦一郎美術館、鹿児島市立美術館、Bunkamura ザ・ミュージアム、三重県立美術館、1998、p.85 / cat.no.29

 ずいぶんと縦に長い画面のフォーマットにあわせた構図の内、たとえば、上部の二つに折れた黒い面に注目してみよう。真っ黒な面自体は完全に平らで、奥行きを抑えた構図に応じるものと見なしうる。ところが、ゆるやかな角度で折れているため、そこに空間の微妙なふくらみが宿されるのだ。
 同じことは、円卓上の静物の周囲や、円卓の脚のあたりにも認めることができる。平らな面を基本的な単位としつつ、それらが不連続に重なりあうことで、あたかも連続写真のように、空間自体が多重的に展開していくさまを見てとれはしないだろうか。
 調子を落とした色の選択、さらに、砂を混ぜる一方で汁気をふくませた半透明な塗りや、円卓の脚でのひっかきによる線などの絵肌の変化も、空間の微妙な変化を支えている。
 そしてこれらを集約するのが、床の市松模様だ。歪みをともなうそれは、規則的でありながら、同時に、流れだそうともしている。

(県立美術館学芸員・石崎勝基)
『中日新聞』(三重版)、1998.11.24、「触るように見る ブラックの世界。回顧展 3」

『ジョルジュ・ブラック回顧展』(1998/11/3~12/13)より
こちらを参照 [ < 三重県立美術館のサイト
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