安井曾太郎《桃》1950

安井曾太郎 (1888-1955)
《桃》
1950(昭和25)年
油彩・キャンヴァス
74.0×62.0cm
京都国立近代美術館


YASUI Sotaro
Peaches
1950
Oil on canvas
74.0x62.0cm
The Nationa Museum of Modern Art, Kyoto

Cf., 『歿後50年 安井曾太郎展』図録、宮城県美術館、茨城県立近代美術館、三重県立美術館、2005、pp11.8-119 / cat.no.108

 留学後の模索期を経て成立した安井固有の作風は、色彩の選択にせよ筆致にせよ、見かけ上の軽快さを特徴としていた。ところが一九五0年といえばすでに六0歳を迎えた頃、強い緊張感をたたえた作品を何点か、安井は制作することになる。《桃》はそうした作品の一つである。
 その特徴は、まず、堅固な幾何学的構成を踏まえた上で、動きを呼びこんでいる点であろう。これはテーブルの脚の角度や、円板のひずみなどにうかがうことができる。
 堅固さと動きを共存させた画面に、他方、きわめて緊迫した筆致で塗りが施される。この塗りの緊張感と積層が、白、褐色、紫、緑、黄の響きを、輝きをはらんだものとするのだ。
 さらに、随所で加えられた黒の勢いある輪郭線や、円板と左右端との接し方など、さまざまな工夫が見出される。もって、絵を見ることの醍醐味を味わわせてくれるような、充溢感のある画面が成立することになった。

(石崎勝基・県立美術館学芸員)
『中日新聞』(三重版)、2005.9.11、「美術館だより」

『歿後50年 安井曾太郎展』(2005/8/6-9/25)より
こちらを参照 [ < 三重県立美術館のサイト
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