ティソ《クローク・ルーム》1885頃

ジェイムズ・ティソ(ジャック・ジョゼフ・ティソ)(1836-1902)
《クローク・ルーム》 
1885年頃
エッチング・紙
7.6×29.3cm


James Tissot (Jacques Joseph Tissot)
Un vestiaire / A Cloakroom
c.1885
etching on paper
7.6×29.3cm
Cf., Edited by Krystyna Matyjaszkiewicz, James Tissot, Abbeville Press, New York, 1985, p.139 / cat.no.176

『ジェームズ・ティソ』展図録、伊勢丹美術館、大丸ミュージアム、三重県立美術館、栃木県立美術館、横浜高島屋、1988、p.119, p.158 / cat.no.99

Cf.cf.

Michael Wentworth, James Tissot, Clarendon Press, Oxford, 1984

 横長の画面はそれだけで平面化する傾向を帯びるが、画面と平行に壁を置いて奥行きが廃される。線影や帽子の形態はいささか弛緩しているが、それも平面性ゆえさほど気にならない。そして平面に沿って整列させられることで現実の空間を逃れたものたちは、江戸初期の誰袖図と同じように人物がいないからこそ、ささやきざわめく。
 絵の外にある対象や主題をそのまま描くことが説得力を失ないつつあった時代に、旧来の描写にのっとったサロン絵画はその空虚さで逆に時代のありようを映し出しもしたのだが、ティソはサロン絵画の枠内にとどまりつつ、主題から逸話的な説明を奪い曖昧なふくみを与えることで今日再評価されるきっかけを得た。
 この作品の制作意図は知られていないが、不在によって何かを暗示するところに、右に述べた性格が読みとれるかもしれない。

(石崎勝基=県立美術館学芸員) 
『中部讀賣新聞』、1988.5.28、「世紀末の華麗 ロンドンとパリ ジェームズ・ティソ展への誘い 11」

『ジェームズ・ティソ』展(1988/5/14~6/12)より
こちらを参照 [ < 三重県立美術館サイト

当該展図録の作品解説の一部→こちら [ < 同上 ]
 
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