関根正二《子供》1919

関根正二 (1899-1919)
《子供》
1919(大正8)年
油彩・キャンヴァス
60.6×45.5cm
石橋財団アーティゾン美術館(旧ブリヂストン美術館)、東京


SEKINE Shoji
Boy
1919
Oil on canvas
60.6x45.5cm
Artizon Museum, Ishibashi Foundation (formerly Bridgestone Museum of Art), Tokyo

Cf., 土方定一、『関根正二 日本の名画 43』、講談社、1974、図16、p.27

匠秀夫、『原色現代日本の美術 第6巻 大正の個性派』、小学館、1978、p.49 / no.19

陰里鉄郎、『村山槐多と関根正二 近代の美術 No.50』、至文堂、1979、第21図

『関根正二とその時代 - 大正洋画の青春 -』展図録、三重県立美術館、福島県立美術館、1986、p.34 / cat.no.1-19、p.168

『関根正二展』図録、神奈川県立近代美術館、福島県立美術館、愛知県美術館、1999、p.85 / cat.no.1-78、p.154

『関根正二展 生誕120年・没後100年』図録、福島県立美術館、三重県立美術館、神奈川県立近代美術館 鎌倉別館、2019-20、p.93 / cat.no.099

 この作品は何よりも、着物の朱と背景の明るい青との対比によって、目をひきつける。
 関根の他の主要な油彩が、暗く重い色調によって統一されているのに対し、ここでは画面が、明るくすっきりしたものとなっている。
 しかしこの作品は、色彩の鮮やかさをもって終わるものではない。明るい青と、関根の色と言われる内から輝くような朱の対比は、それ自体調子の高いものである。筆致を抑えて、彼の素描に見られるような、線描の硬質さが引き立てられる。目は、視線を内に向けているかのように見開かれている。画面を締め括る下部の組み合わされた両手は、未完の段階に留まっているが、これ以上先に進めることはできないと感じさせるだろう。
 このような要素が一つになって、画面を非常に鋭敏なものとし、張りつめた神経を、絵を視る者に感じさせるのである。
 心の緊張に由来するであろう、このような絵の性格が、『子供』像を紛れもなく関根独自の作品としているのだ。

(県立美術館学芸員・石崎勝基)
『朝日新聞』(三重版)、1986.9.13、「大正洋画の青春 関根正二とその時代展から 4」

『関根正二とその時代 - 大正洋画の青春 -』展(1986/9/6~10/5)より
こちらを参照 [ < 三重県立美術館のサイト
   HOME美術の話著作権切れ日本美術等400字前後解説輯挿図一覧