ピエロ・ディ・コジモ《老人の頭部の習作》

ピエロ・ディ・コジモ(1461/62-1521)
《老人の頭部の習作》
ペン、筆、褐色のインク、褐色の淡彩・紙
26.9×18.7cm

エルミタージュ美術館、サンクト・ペテルブルク


Giorgione
Study of the head of an elderly man
Pen, brush, brown ink and wash on paper
26.9×18.7cm
The State Hermitage Museum, Saint Petersburg

Cf., 『エルミタージュ美術館展 イタリア ルネサンス・バロック絵画』図録、東武美術館、三重県立美術館、茨城県近代美術館、1993-94、p.125 / cat.no.48

 うつむいた男性のはげあがった頭部がクローズ・アップでとらえられ、画面から飛びだしてきそうに見える。そこに陽物崇拝が暗示されていると、読みこむこともできなくはあるまい。それがいやみにならずにすんでいるのは、ヴォリュームの描写が、線や明暗の端正なバランスによってもたらされているからだ。
 頭頂部の輪郭が薄い線で型どられているのに対し、耳から顎にかけては濃く重ねた線と影の帯が施され、奥に退く。この対比にさらに、頭頂部の空白と、顔面の目や鼻、口もとの大ぶりな造作がかけあわされている。これらがいっぱいに占めることで、画面に充実感がもたらされる一方、褐色の薄さは、軽快さを宿す。何よりも線自体、強さと繊細さをあわせもっている。
 画面を大きな形で埋めるだけでは、ヴォリュームは得られない。その存在感をきわめて微妙な手段によって実現することが、作者の狙いだったのだろう。

(石崎勝基)
没原稿、1993/11/2

『エルミタージュ美術館展 イタリア ルネサンス・バロック絵画』(1993/11/2~12/5)より
こちらを参照 [ < 三重県立美術館のサイト
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