ゴーギャン《ラヴァルの横顔の見える静物》1886

ポール・ゴーギャン(1848-1903)
《ラヴァルの横顔の見える静物》
1886年
油彩・キャンヴァス
46×38cm
インディアナポリス美術館、インディアナポリス


Paul Gauguin
Nature morte au profil de Laval
1886
Huile sur toile
46×38cm
Indianapolis Museum of Art, Indianapolis

Cf., 『ゴーギャンとポン=タヴァン派』展図録、Bunkamura ザ・ミュージアム、京都国立近代美術館、北海道立近代美術館、三重県立美術館、郡山市立美術館、1993、p.30 / cat.no.6

 まず目をひくのは、その構図であろう。画面右端から、男の首がにゅっとのぞきこむ。縁でたちきられているため、画面の外/右から内/左へという方向性が生じることになる。この方向性を、生きものめいた壺が受けとめるのだ。
 男は、テーブルとの関係からして、かがみこむ姿勢をとっているらしい。これは、男と壺の対話にいっそうの親密さをもたらすと同時に、男から壺へという方向だけでなく、画面内から縁をこえて外へひろがっていく方向をも暗示する。二つの方向性を受けいれる空間こそが、この絵の主題といえるかもしれない。
 全体を左下がりの筆触がおおう中、壺や果物、頭部はくっきりした輪郭線で囲むかたわらで、背景の壁はぼんやりと、明度差がつけられた面のみだ。やや冷たい薄緑を主調にしつつ、赤系、とりわけ壺の手前の果物をかたどる朱の影が対比される。対照によるこうした構造も、空間に、微妙な膨張と収縮を許す生動感を与えるだろう。

(県立美術館学芸員・石崎勝基)
『中日新聞』(三重版)、1993.9.12、「ゴーギャンと若き仲間たち 4」

『ゴーギャンとポン=タヴァン派』展(1993/9/4~10/3)より
こちらを参照 [ < 三重県立美術館のサイト
 当展に関し;

ゴーギャンとポン=タヴァン派展」、『友の会だより』、no33, 1993.7.10
 
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