ドニ《ペロ=ギレックのボートレース》1892頃

モーリス・ドニ(1870-1943)
《ペロ=ギレックのボートレース》
1892年頃
油彩・厚紙
45×54cm

個人蔵


Maurice Denis
Régates à Perros-Guirec
vers 1892
Huile sur carton
45×54cm
Collection particulière

Cf., 『ゴーギャンとポン=タヴァン派』展図録、Bunkamura ザ・ミュージアム、京都国立近代美術館、北海道立近代美術館、三重県立美術館、郡山市立美術館、1993、p.140 / cat.no.119

 とりわけ目をひくのは、波紋を表わす白い線の文様である。水面の写実的な描写とは、とても見えまい。むしろ、水面に割りあてた画布の平らなひろがりを、線であまさずうめようとした結果なのだろう。線の動きに勢いも向きも見出されず、それはただ、画布の表面をなぞるのみだ。表面の端に近づくと、線は曲がりくねらざるをえないわけだが、それが結果として、波の記号をなしている。
 波紋以外の部分も、平面性の強調に応じて処理される。人物や帆のシルエットは、対象の再現というより、線の自然な伸びが優先され決定されている。右手の柱が上下を貫くことで、画面全体は手前にせりだす。そして柱の表面や空の雲にも線のうねり。
 装飾的なパターンによって組みたてられた画面は、しかしそのことでむしろ、奇妙な生動感を獲得した。波の線は、一息にひかれたのでなく、とぎれとぎれに連ねられたものだ。そのため線自体の運動よりも、線をのせた表面全体が強化される。女たちの頭上での光の反射は、表面の脈動の頂点にほかならない。

(県立美術館学芸員・石崎勝基)
『中日新聞』(三重版)、1993.9.15、「ゴーギャンと若き仲間たち 6」

『ゴーギャンとポン=タヴァン派』展(1993/9/4~10/3)より
こちらを参照 [ < 三重県立美術館のサイト
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