クールベ《凪、海》1865-67

ギュスターヴ・クールベ(1819-1877)
《凪、海》
1865-67年
油彩・キャンヴァス
45×55cm
ロン=ル=ソニエ美術館


Gustave Courbet
Le calme, marine
1865-67
Huile sur toile
45x55cm
Musée des Beaux-Arts, Lon-le-Saunier

Cf., 『ブーダンとオンフル-ルの画家たち』展図録、Bunkamura ザ・ミュージアム、三重県立美術館、茨城県近代美術館、1996-97、p.159 / cat.no.144

 空が三分の二を占め、海と浜辺を描いた画面は、空のひろがりと雲の変化をとらえようとしたのだろう。
 しかし、たとえば雲の部分で、暗いグレーの上にのせた白は、溶き油を少な目にした絵具をなすりつけたものか、汚れがそのまま残っているかのように見えはしないだろうか。上辺下辺に平行な水平線で区切られた画面は、平面性を強調することになるため、いっそう絵具の物質性を感じとらせずにいない。
 小品ゆえの即興性ということもあるだろう。クールベは通例写実主義の作家と見なされているが、ただここでは、何かを描こうとする時、描く方法に対する意識が前面に出てしまうという、近代の徴候を読みとることもできるかもしれない。

(県立美術館学芸員・石崎勝基)
『中日新聞』(三重版)、1996.12.25、「印象派の先駆け ブーダンとオンフルールの画家たち 3」

『ブーダンとオンフルールの画家たち』(1996/12/21~'97/2/2)より
こちらを参照 [ < 三重県立美術館のサイト
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