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ドクターX
Docter X
    1932年、USA 
 監督   マイケル・カーティス 
撮影   リチャード・タワース
編集   ジョージ・エイミー 
 美術   アントン・グロット 
    約1時間16分 
画面比:横×縦    1.37:1 
    二色カラー 

DVD(『アメリカン・ホラー・フィルム・ベスト・コレクション vol.2』(→こちらを参照)より)
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 後に『フランケンシュタイン復活』(1939)、『フランケンシュタインの幽霊』(1942)、『フランケンシュタインと狼男』(1943)、『フランケンシュタインの館』(1944)、『ドラキュラとせむし女』(1945)と、ユニヴァーサルのシリーズに出演、とりわけ『フランケンシュタイン復活』での警察署長役で印象的だったライオネル・アトウィルが、それらに先だって主演した作品。翌年の『肉の蝋人形』(1933:2月17日USA公開)ともども、監督マイケル・カーティス、美術はアントン・グロットです。やはり『肉の蠟人形』に続投するフェイ・レイは、時を置かず1933年3月7日USA公開された『キング・コング』で永遠の偶像となるのでした。またマイケル・カーティスは『カサブランカ』(1942)、『ホワイト・クリスマス』(1954)、『俺たちは天使じゃない』(1955)などで知られているのでしょうが、他方、ボリス・カーロフ主演の『歩く死骸』(1936)なども手がけています(→こちらで少し触れました)。
 本作はハワード・ウォレン・コムストックとアレン・C・ミラーによる戯曲を原作としているとのことで、冒頭での新聞記者と警官の会話などにそうした出自をうかがうことができるかもしれません。奇人だらけの研究所のメンバーが連続殺人犯ではないかと疑われるという設定は、研究者たちの性格描写が充分に描きこまれないため活かされているとはいいがたいのではないかと思われるのですが、他方、後半での舞台となるタイトル・ロールの別荘である屋敷内部のセットは、古城映画としてなかなか楽しめるものとなっています。『肉の蠟人形』同様三色カラー以前の赤と緑による二色カラーのため、緑やオレンジばかりが目立つ色調が、逆に雰囲気醸成に寄与している。フェイ・レイの衣裳も緑のものが多い。そもそも本作では夜の場面の比重が大きく、また顔の下から光を当てる場面もむやみに頻出します。
 物語は犯人を特定するための心理試験が実施されるというあたりから、SFの相を呈するようになります。以下、ネタバレがありますのでご注意ください。

 霧の夜の波止場から本篇は始まります。通りの奥に遺体安置所がある。樽の陰から新聞記者リー・テイラー(リー・トレイシー)が現われます。事件の様子を探る彼が本篇の狂言廻しとなります。コミック・リリーフも兼ねて新聞記者が同様の役割をつとめるのは、『肉の蝋人形』でも踏襲されることでしょう。彼は掌に握手ブザーなるものを付けています。
 遺体安置所に車が到着します。乗っていたのはグザヴィエ博士(ライオネル・アトウィル)で、検屍のため訪れたのでした。Xことグザヴィエはとある研究所の所長なのですが、その近辺では今月に入ってすでに6件の殺人事件が起きたという。いずれも満月の夜とのことです。首を絞められた死体にはメスによる傷や咬み千切られた跡がある。凶器は近辺ではその研究所でしか使われていないウィーン製のメスでした。捜査を要請する警察に対し、グザヴィエは自ら捜査することを申しでます。


 研究所の表札が出ます。「外科研究所 Academy of Surgical Research」という。かなり天井の高そうな、というか天井の映らない部屋の壁一面が書棚で満たされています。梯子に登って上の方の棚からグザヴィエが資料を探している。梯子の奥に扉口があり、そこからグザヴィエの娘ジョアン(フェイ・レイ)が入ってきます。緑の服を着ている。

 グザヴィエの研究室に刑事たちが訪ねてきます。奥には鉄の螺旋階段が見えます。ここから所内の各研究室をグザヴィエが案内して回ることになる。
 まずはウェルズ博士(プレストン・フォスター)の部屋です。カニバリズムの研究をしていたとあって刑事たちは色めきたちますが、黒手袋をはめた左手が義手とあって、首を絞めることはできないと容疑者リストからはずされる。今は何やら心臓を入れたフラスコを調べているらしい。カメラが左から右へパンすると扉口が見えます。本作では静止、水平のパン、また静止というカメラの動きがしばしばとられるようです。
 ウェルズの部屋を出ると廊下です。広い範囲で映されるわけではありませんが、くねくねと折れ曲がっているようで、いくつもの扉につながっている。段差もあります。奥の天井は低めです。壁は白っぽい。この廊下はなかなか魅力的でした。
 数段おりて手前右の部屋がヘインズ博士(ジョン・レイ)の部屋です。タヒチで遭難したことがあるという。脳移植の研究をしています。
 次いでロウィッツ博士(アーサー・エドマンド・ケリー)は左目に黒の眼帯をかけています。彼も遭難の生き残りの一人です。月光の影響を研究している。詩集を出したことがあるそうです。同じ部屋に共同研究者であるデューク博士(ハリー・ベレスフォード)もいました。車椅子に乗っています。この部屋にも鉄の螺旋階段があります。また奥には幅の広い台形の梁があり、その向こうに見えるのは天体望遠鏡でしょうか。


 2階のバルコニーにテイラー記者がいます。傾斜の急な非常階段が右上にあがっている。右の暗い壁はいったん奥まり、そこに梯子状の影が落ちています。
 カメラが俯瞰になると、壁の右手には彫像を配した壁龕が設けられています。この部分の壁はゆるく湾曲している。さらに右に扉口があり、そこからジョアンが出てきます。壁には非常階段をのぼろうとする記者の影が落ちている。カメラが右から左に動くと、記者の本体が映ります。誰何された記者は畳みこまれていた非常階段をバルコニーから地面へ下ろします。階段をおりる際、左の壁に階段と記者の影が落ちる。


 グザヴィエは刑事たちに48時間の猶予を乞います。刑事たちは廊下を手前に進みます。下への階段があるらしく、欄干が走っています。つまり2階ないしそれ以上だったわけです。記者がバルコニーにいたのも筋が通っている。後半の別荘でも主な舞台は2階ないしそれ以上となります。何かわけでもあるのでしょうか。グザヴィエの執事オットー(ジョージ・ローズナー)が顔の下から光を当てて待機していました。
 一方ジョアンに拳銃を突きつけられて追い払われた記者はベンチに坐っています。背後から異形の人物が忍び寄る。しかし冒頭で巡査にもらった葉巻が破裂し、怪人は引きさがります。


 記者が編集部で発破をかけられる場面を経て、グザヴィエの自宅に記者はやってきます。煉瓦積みの壁に蔦が這い、玄関手前で横に欄干が伸びるけっこうなお屋敷です。21歳だというメイドのメイミー(レイラ・ベネット。『古城の妖鬼』(1935)でもメイド役として再会できます)がまず対応します。
 玄関広間に入ると、手前から玄関側の壁に向かう階段があがっています。上で左に折れて回廊となり、吹き抜けを巡っているようです。
 メイドがジョアンを呼びに行った間に、玄関広間の左側でしょうか、記者は居間に入りこむ。カメラが右から左に撫でます。手前にグランド・ピアノ、左に暖炉が見える。暖炉の左右に窓があり、緑のカーテンが束ねてあります。奥の方は円柱にはさまれて奥まったフランス窓があります。
 記者は帰り際、2階の窓からメイドにバケツの水を浴びせられる。


 霧の駅を手前から汽車が走り抜けます。風が音を立てている。駅はロング・アイランドのブラックストーン・ショールズ Blackstone Shoals / Long Island とのことです。グザヴィエの鞄の荷札から、これまでの舞台がニューヨークだったことがわかります。
 約30分弱、曇り月夜の崖の上にシルエットと化した館が映しだされます。崖の下では波が打ちよせ、館はけっこう出入りが多い。グザヴィエの別荘ですが、外観全景が登場するのはここだけでした。
 玄関前は地面から数段あがったテラスになっています。欄干で区切られている。壁に蔦が這っています。やはり風が強い。
 居間でしょうか、グザヴィエと4人の研究者たちが集まっています。奥左の壁には背の高い書棚、右には上が斜面になった暖炉が見えます。
 玄関前に馬車が停まります。おりたのは記者でした。左側にアーチが迫りだしており、その中で奥まって立派な扉があります。記者はアーチの左の樋をよじ登ります。カメラが下から上へ動く。アーチの上にバルコニーがあり、その窓の奥が居間のようです。
 記者はいったん樋を伝いおります。アーチの左で壁が折れ、奥に向かいます。折れた壁に扉がある。奥ですぐにまた壁は左に折れて伸びる。こちらには窓があります。また左で折れ、角を切った扉口がある。
 扉は施錠されておらず、中に入った記者が、切り替わると右奥から出てきます。先立つ研究所やグザヴィエ邸でもそうでしたが、この記者は取材のためなら不法侵入や窃盗にためらいはないようです。
 とまれ、記者が入ってきたのは右の半円アーチの開口部で、その奥にも緑の扉が見えます。開口部の左は白い壁で、画面中央、手前から奥へ真っ直ぐ幅の狭い階段があがっている。画面の手前・上でも幅が広くゆるいアーチが枠取っています。手前は台所でしょうか。鳩時計があります。


 記者は中央の階段をのぼります。切り替わると、右から出てきたそこは暗い廊下が前後に伸びている。廊下の奥でも10段ほどあがるようです。この廊下はこの後も何度か登場することでしょう。右の階段をあがったすぐ向こうの扉からまず骸骨、次いでそれを抱えた執事が出てきます。
 手間に欄干が走る廊下をジョアンとメイドが左から進んできます。メイドはびびっています。


 記者は実験室に入ってきます。何やら奇妙な装置が設置されている。付け柱つきの太い石柱が幾本も見えます。
 左側で7段ほど上がると、うねくる装飾的な欄干のある短い回廊が右に向かっている。その上はゆるいアーチがかぶさっています。切り替わると回廊の上でさらに右上へ数段のぼる。上方でも左右に伸びる装飾欄干の向こうに扉口があります。欄干の手前、上方には3段になったアーチが枠取っている。欄干の下方にも幅の広いアーチがあり、奥まって低い幅広扉らしきものがのぞいています。
 上の扉口から執事とメイドが出てきます。執事はメイドを怯えさせて嬉しそうです。記者は慌てて戻り、下の踊り場の左にあった扉の中へ入る。物置でした。壁はいくつもの戸棚で区切られ、骸骨がいくつも置いてあります。


 幅広アーチの下の幅広扉の方から博士たちが進んできます。装置は細いガラス管が上ひろがりの花状に並ぶというものです。ガラス管には長短があります。グザヴィエの研究になるもので、心拍の変化によって意識化の症状を顕在化するためのものだとウェルズが説明します。説明はもっともらしいのですが、目ざすところはいささか大ざっぱな気がします。ともあれこれでグザヴィエは連続殺人犯を特定しようというのです。
 手前に大きな窓があり、満月が見えます。窓の手前はゆるい尖頭アーチで囲われています。尖頭アーチは左にも続き、実験室の壁を区切っているようです。
 記者が潜む物置の壁には覗き孔が設けられていました。そこからガスが吹きだし、記者は昏倒してしまう。
 装置が稼働されます。ぐるぐる回る回転板や電極もあります。ユニヴァーサルのフランケンシュタイン・シリーズが連想されずにいません。もっとも本作の時点で先行するのは第1作の『フランケンシュタイン』(1931)だけなのですが。他方、ガラス球の表面にいくつも小球が浮きだすという電灯らしきものも吊りさがっています。
 約43分、実験の開始です。グザヴィエが説明します。顔の下からオレンジの光が当たっています。博士たちも同様で、それぞれアップが下から見上げられます。実験室には小舞台のような部分があり、カーテンの奥にこれまでの被害者の蠟人形が設置されています。どう考えてもおかしい。さらにメイドが最後の被害者に扮し、犯人役の執事が迫るのでした。
 突然停電になります。装置に反応が出たのはロウィッツ博士でしたが、灯りが戻ると刺されていました。


 容疑圏外のウェルズが制御室で捜査していたのですが、彼はガラス扉を破って倒れこみます。制御室の扉は中2階にあり、左へ少し進んですぐ手前へ7~8段下りるようになっている。おりた手前左で別室につながっているようです。

 前に出てきた暗い廊下の左奥からジョアンが現われ、手前右の階段をおります。切り替わると実験室に入ってくる。ということはあの廊下は2階ではなく3階に当たるということでしょうか。あるいは居間は2階、実験室は1階なのか。
 左奥の扉口から執事が出てくるところが上から見下ろされます。手前右に装飾欄干がのぞいている。右奥が物置の扉だという。カメラは少し左から右へ動きます。執事がグザヴィエを呼ぶさまが下から見上げられます。
 切り替わると、右に白い壁の廊下です。奥右に半円アーチの扉口があり、そこからグザヴィエとジョアンが出てきます。廊下の天井右半分は吹抜状になっており、太い木の梁が走っている。
 物置の扉とその左の扉口との角では、黒っぽい柱が上方で十字に分岐した梁につながっています。物置の扉から気絶した記者が転がり出る。


 ジョアンと記者が右下の階段から上がってきて3階(?)廊下に出ます。階段をあがって左に欄干が伸び、境の柱の上には猫らしきものの彫像が配されています。
 廊下の奥、上への階段の手前、右側にも上への階段があり、執事は記者をそちらに案内します。


 ジョアンが目を覚まし、3階廊下へ左から出てきて、右手前の部屋をノックします。ここがグザヴィエの部屋らしい。以前執事が骸骨を抱えて出てきたところです。
 幾本もの大アーチが並んで横切る部屋です。奥に小さな方形の扉があり、そこからジョアンが出てきます。手前でグザヴィエがロウィッツの検屍をしていました。追ってヘインズも現われます。最初はカーテンの向こうの影としてで、これまでにも同じモティーフが登場していました。


 翌朝の浜辺です。ジョアンと記者がのんびりしている。双方水着姿です。いいんでしょうか。奥に平らな巨岩が見えます。二人を上から見下ろしていたのは松葉杖をついたデュークでした。
 メイドが自室のベッドで怯えています。手前にゆるい大アーチが枠取っている。ジョアンとウェルズがなだめています。ジョアンは暗緑色のガウンを着ている。
 ジョアンとウェルズはメイドの部屋から3階廊下に出ます。3階廊下が階段室側から眺められる。廊下は白い壁に太い木の梁が走っており、右手では梁が4分の1円をなして右に下がっています。


 約59分、右に白い壁が伸びる廊下が下から見上げられます。暗い。壁には二つ、間を置いて半円アーチの扉口が開いている。壁にランプや梁の影が落ちています。以前グザヴィエとジョアンが出てきたところです。奥からシルエット化した人物が懐中電灯を手に進んできます。記者でした。右手前の扉に入っていく。
 約1時間2分、二度目の実験が実施されます。メイドの代役としてジョアンが被害者役をつとめます。グザヴィエも含めて被験者たちは動けないよう椅子に拘束される。
 制御室に隠し戸棚があり、「新たな肉体 synthetic flesh」と言いながらウェルズが義手を装着します。すると自由に動くのでした。ペースト状のものを顔にも塗りたくり、異形化する。
 幅広アーチの下に低い隠し扉があり、そこから異形怪人が出てきます。執事の背後に忍び寄る。緑の影だけで襲うさまが描かれます。小舞台上のベッドに横たわるジョアンの元に近づいていく。グザヴィエの問いかけに「新しいウェルズ」だ、新しい肉体を創造したのだと答える。3人の博士たちは動けません。
 ジョアン危うしというところに記者が飛びこんできます。どこにいたのでしょう。気絶しているのを発見された側の扉から物置に入り、そこを通って実験室にたどり着いたということなのかもしれません。ただいきなりの感は否めますまい。ともあれ格闘が始まる。床に斜め格子の影が落ちています。
 争いながら移動して、廊下奥の階段をあがった踊り場に達します。ここまで来たのは本篇では初めてです。
 右下がりになった形の扉から、左上がりになった梁が幾本もある部屋に入ります。向かって右には大きな窓があり、その手前に捻り柱が見える。さらに手前には下への階段がのぞいています。記者は怪人にランプを投げつけ、火だるまになった怪人は窓を突き破って崖下の海に落ちるのでした。


 グザヴィエの装置の問題(結局役に立たなかった)、ウェルズの発明、犯行の動機、博士たちの描きわけ、警察による捜査の猶予、加えて記者の位置づけなど、筋立ての点ではいろいろとつっこみどころがありそうです。原作の戯曲ではどうなっていたのでしょうか。
 ただ理屈はどうあれ、装置が作動するさまはそれなりに見栄えがありました。研究所もそうでしたが別荘でも1階はどうなっているのかとか、部屋どうしの位置関係はもう一つ不分明ではありますが、欄干や柱、アーチなどの装飾は豊かですし、上下差もあり、何より入り組んだその空間は古城映画として評価に値するように思われます。

おまけ  『アメリカン・ホラー・フィルム・ベスト・コレクション vol.1』(2014/7/2→こちらを参照)
から時を置くこと暫し、もう出ないんじゃないかと思っていた
『アメリカン・ホラー・フィルム・ベスト・コレクション vol.2』(2015/6/3)
『アメリカン・ホラー・フィルム・ベスト・コレクション vol.3』(2015/7/3)
が続けざまに発売されました。Vol.1 に比べるとホラーの範疇に含めるには無理のある作品がけっこう目につき、また古城度の高からぬ作品も少なくないのですが、ともあれ所収作品を公開年順に並べ直すと;

vol. disc
1932 ドクターX 2 1
1932 ジンギスカンの仮面 3 1
1932 獣人島 3 8
1932 モルグ街の殺人 3 4
1933 動物園殺人事件 2 6
1935 古城の妖鬼 2 2
1936 透明光線 3 2
1939 恐怖のロンドン塔 3 3
1939 ドクターXの帰還 3 7
1940 死刑台の呪い 2 7
1941 ベラ・ルゴシの幽霊の館 2 4
1942 不死の怪物 3 5
1944 死人の眼 2 3
1944 謎の下宿人 2 5
1951 奇妙な扉 2 8
1952 黒い城 3 6
Vol. ごとに柳下毅一郎による各作品解説を掲載したパンフレット封入。

古城度が高くないため取りあげなかった

『獣人島』(1932)はH.G.ウェルズの『モロー博士の島』を原作とし、監督はアール・C・ケントン。チャールズ・ロートンの名演で知られる作品ですが、モロー博士の屋敷の上下構造などに見るべき点があるものの、古城映画とはいいがたい。ベラ・ルゴシも出ています。この作品については、

稲生平太郎・高橋洋、『映画の生体解剖 恐怖と恍惚のシネマガイド』、2014、pp.43-45、p.106


などを参照。

『モルグ街の殺人』(1932)はポーの短篇が原作ですが、物語は例によってあまり忠実とはいいかねます。ロバート・フローリーが監督、撮影をカール・フロイント(→こちらを参照)、チャールズ・D・ホールが美術(→こちらを参照)、ベラ・ルゴシ主演です。古城映画とはいいかねるものの、ルゴシ演じるドクター・ミラクルのアジトや、クライマックスでの屋根伝いの場面などに雰囲気がありました。

『動物園殺人事件』(1933)はタイトルからもうかがえるように超自然現象は起きません。本作同様ライオネル・アトウィル主演で、監督はエドワード・サザーランド、アーネスト・ホーラーが撮影、若きランドルフ・スコットも出演しています。夜の動物園を登場人物が移動する場面などに雰囲気がありました。

『ドクターXの帰還』(1939)のお話や設定は本作とはつながっていません。ヴィンセント・シャーマン監督、ハンフリー・ボガートが出ていることで知られる作品。

『死刑台の呪い』(1940)はニック・グラインド監督、ボリス・カーロフ主演のマッド・サイエンティストもの。『魔人ドラキュラ』(1931)や『フランケンシュタイン』(1931)、『ミイラ再生』(1932)のエドワード・ヴァン・スローンも出ています。

『ベラ・ルゴシの幽霊の館』(1941)については『猿の怪人』(1943)のページで少し触れました。ただその際に参照したVHS版が約56分だったのに対し、今回のDVD版は約1時間5分となっています。始めの方でところどころカットされていたようです。

『死人の眼』(1944)はタイトルからして、手塚治虫『ブラック・ジャック』の一挿話を原作とした大林宣彦『瞳の中の訪問者』(1977)のような話かと思いきや、角膜移植は行なわれるものの、超自然現象の起きない犯人当てものでした。レジナルド・ル・ボーグが監督、主演のロン・チェイニー・Jr.は画家役です。篇中に出てくる絵はいささか辛いものではありますが、ヒロインの屋敷の階段広間が多少雰囲気があるといえなくもない。ラッセル・A・ガウスマンがセット装飾に加わっています(→こちらを参照)。

『謎の下宿人』(1944) は切り裂きジャックに材を得た作品で、『不死の怪物』(1942)とともに監督はジョン・ブラーム、撮影はルシアン・バラード。超自然現象は起きません。古城も出てきませんが、とりわけ後ろ3分の1で、なかなかかっこうのよい画面が目白押しになります。クライマックスは劇場の舞台裏で展開、キャットウォークや階段が入り組んだ空間を作ってくれる。また殺人犯に扮するレアード・クレーガーも大いに存在感を発しています。

 2016/1/8 以後、随時修正・追補
追記
2016/8/15 
『アメリカン・ホラー・フィルム・ベスト・コレクション vol.4』(2016/8/3)
が発売されました。残念ながら今回は古城映画と呼べそうな作品は収められていないので、ここで簡単に触れておくことにしましょう。ともあれ所収作品を公開年順に並べ直すと;

disc
1931 狂へる天才 1
1933 殺人魔の魂 3
1940 透明人間の逆襲 4
1941 電気人間 2
1946 殺人鬼の巨像・クリーパー 5
柳下毅一郎による各作品解説を掲載したパンフレット封入。

『狂へる天才』(1931)は『ドクターX』(1932)、『肉の蝋人形』(1933)に先立つマイケル・カーティス監督作品。美術監督も同じくアントン・グロットです。ただし本作はホラーでもスリラーでもない、芸術家・芸能界ものでした。とはいえ主演のジョン・バリモア演じる座長がいささか狂的な性格を示し、はじめの方でゴーレムやフランケンシュタインを引きあいに出したりします。またボリス・カーロフが『フランケンシュタイン』に先だってちょい役で登場する。ちなみに本作は1931年11月7日USA公開、『フランケンシュタイン』は同年11月21日公開とのことです。屋根裏部屋やクライマックスの舞台などに面白いセットを見ることができました。

『殺人魔の魂』(1933)は『恐怖城』(1932)のヴィクター・ハルペリン監督作。撮影も同じアーサー・マルティネリです。若きランドルフ・スコットも出演しています。

『透明人間の逆襲』(1940)は『透明人間』(1933、監督:ジェイムズ・ホエール)の続篇で、監督はジョー・メイ(ヨーマ・マイ)。ユニヴァーサル製作とあって美術はお馴染みジャック・オタースン、セット装飾はラッセル・A・ガウスマンです。お屋敷の他、炭坑のトロッコ引き揚げ斜面もちらっと登場します。透明人間に扮するのはヴィンセント・プライスで、最後になってようやく顔が映る。『凸凹フランケンシュタインの巻』(1948)ラストでの声だけの出演はここに由来するわけでした。

『電気人間』(1941)はジョージ・ワグナーが『狼男』(1941)に先だって監督した作品で、ロン・チェイニー(・Jr.)がライオネル・アトウィル扮するマッド・サイエンティストの手によって怪物化するお話です。ちなみに本作は1941年3月28日USA公開、『狼男』は同年12月9日公開とのことでした。やはりユニヴァーサル製作とあって美術は同じくジャック・オタースン、セット装飾はラッセル・A・ガウスマンです。実験室つきお屋敷が登場します。

『殺人鬼の巨像・クリーパー』(1946)はジャン・ヤーブロー監督、こちらもユニヴァーサル製作とあって美術はジョン・B・グッドマンとエイブラハム・グロスマン、セット装飾はラッセル・A・ガウスマンとラルフ・ウォリントンです。超自然現象は起こりません。美術界が舞台で、いずれもいい加減な美術批評家が3人、商業美術家なれど芳しからぬタブローを描く画家が1人、唯一20世紀半ばという製作年代に多少とも呼応するといえなくもない作品を制作する彫刻家が1人登場します。彼の素描が1点映りますが、それらしく見えました。

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